■マコの傷跡■

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chapter 57




~ chapter 57 “彼女の主治医” ~


彼女に対してじれったさやイライラ感は正直あったし「もう知らない」と何度も思った。
でも。でもどうしても完全に放っておけない。その間で私は悩んで、もう彼女に何を言えばいいのか、
彼女に対してどう接するのがいいのかわからなくなって行った。

さんざん迷った挙句に、私は彼女の主治医に電話する事にした。
私が母親と暮らしていた頃、私の主治医は私の母親を呼んだ。
家族ではないけれど同じ家に暮らしているのだから家族のようなものだ。
少なくとも私や私の旦那や旦那の両親はそう思っている。
彼女の主治医は、なぜ私と連絡を取ろうとしないのだろう?
彼女がうちでどんな人達に囲まれ、どんな環境で生きているのかは大事な事じゃないだろうか?
彼女にとって今暮らすこの家の環境や私との関係は治療に全く必要ないものだろうか?
本気で彼女を治そうと思ってるのなら、
一度くらい私に話を聞きたいと思ってもいいんじゃないだろうか。

電話をかけると彼女の主治医は「とにかく頑張れとは言わない様に」と言った。
そして「彼女はまだ思春期をきちんと越えてない状態なんです」と。
成長過程で必要な親子間の信頼関係を、しっかり築かないまま彼女は今の年齢になってしまった。
心はまだ思春期の子供なのに身体ばかりが成長し、周りからも歳相応の扱いを受け
それに答えられない自分のギャップに苦しんでいると言う。
「今からでも親と、もっとしっかりした係わり合いを持てばいいのだけど」
そう言われた時、私は一瞬、彼女を実家から私の家に越させたのは間違いだったかと思った。
「私が彼女に、そんなに実家に居るのが嫌ならウチに来ればって言ったんです。
あの時、あのまま実家に居た方が彼女には良かったんでしょうか」と聞く私に
主治医は「どちらも大きな違いはありません。」と言った。
彼女の両親には主治医からも説明をしたけれど、
わかってるんだかわかっていないんだか、という感じだったらしい。
実際、彼女の親も体調を崩しているらしく、彼女を支えるだけの力を持っていないのかもしれない。

「彼女の親がそれを出来ないならその代わりになる人でも、
誰かとそういう信頼関係を作れないと、なかなか難しいと思います。」

代わりになる人・・・・。
今それが出来る状況にあるのは私だと思った。
でも・・・そんな事が私に出来るんだろうか。


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